「豊胸手術で傷跡が残り、それが原因でバレてしまう」そのような例はたくさんあり、現に豊胸手術の代表格ともいえる「シリコンバック」は乳房の下にメスをいれて、そこからバックを入れるのでどうしても傷跡は残ります。
しかし、豊胸手術はシリコンバックだけではありません。近年ではメスではなく注射器を用いた豊胸手術も確立されています。以降では「メスを用いない豊胸手術」を種類ごとに解説いたします。
ヒアルロン酸はタンパク質の一種で、コラーゲンと同じく美容効果の高い成分として注目を集めています。シワの除去や肌質改善などで有名なヒアルロン酸ですが、実はバストアップにも効果的なものです。
ヒアルロン酸は体内の水分を溜め込む性質があるので、皮膚の内側に水分を集め結果的に肌に張りを与えます。その性質を応用して、バスト内にヒアルロン酸を直接注入することでボリュームアップを計るのがヒアルロン酸注射による豊胸手術です。
まずヒアルロン酸は体がもともと持っている成分なので、アレルギーなどのリスクが低いことがメリットとして挙げられます。
そして、ダウンタイムの短さも大きなメリットです。ダウンタイムとは美容整形を受けてから生じる腫れや内出血の期間や、術後の筋肉痛のような痛みの期間などを総括して、術後から社会復帰できるまでの期間のことを称します。
ヒアルロン酸注射は術後に即退院で早ければ一日で社会復帰が可能で、長引いても2~3日程度のダウンタイムです。その手軽さから「プチ豊胸」と呼ばれていたりします。
ヒアルロン酸は基本的には栄養素です。そのため、体内にあると吸収されていずれ無くなってしまいます。そのため、ヒアルロン酸による豊胸は持続時間が半年~2年程度と他の施術と比べて短めです。
他に、豊胸には粒子の大きなヒアルロン酸を使用するため、感触が固めです。見た目や動きは自然ですが感触だけはやや不自然になる傾向です。サイズは1カップ程度のアップなので物足りないと感じるかもしれません。
自分のお腹やお尻の脂肪を吸引して、その脂肪をバストに直接注入してサイズアップさせる施術です。自分の組織を使用するので、アレルギーなどのリスクは限りなく低く、バストアップとシェイプアップ両方を実現できます。
バストがそもそも脂肪の塊なので、脂肪注入による豊胸は他の施術と比べて、形や動きはもちろん感触まで最も自然な仕上がりとされています。そのため、比較的バレにくい豊胸手術でもあります。
さらに運よく注入した脂肪が定着すれば、半永久的に持続するというメリットもあり、生涯で一度の施術で済む可能性もあります。
半永久的な持続時間はあくまでも脂肪が定着した場合で、運悪く定着しなかった場合は数年で元に戻ってしまいます。脂肪が定着するかしないかは予測できるものではなく、運任せな部分があるのがデメリットです。
また体全体で脂肪が少ない人や、皮膚が固めで伸びづらい人には効果が薄く、場合によっては施術できないこともあるので、やや人を選ぶ傾向にある施術です。
施術の手法はヒアルロン酸注射とよく似ていますが、注入されるのはいう98%が水で2%がポリアミドという成分で構成されたジェル状の成分です。比較的最近確立された豊胸手術で、注目度が高まっています。
ヒアルロン酸注射と同じく、アレルギーのリスクが低く、ダウンタイムが短く手軽に受けられる施術法ですが、ヒアルロン酸の弱点を克服している点が大きなメリットです。
アクアフィリングでは形や動きだけでなく、感触も自然な仕上がりとなり、さらに持続時間も3~5年と長めです。サイズも2カップほど大きくすることが可能で、いつでも追加注入ができます。
アクアフィリングの効果はヒアルロン酸注射を凌ぐものであり、特にデメリットはありません、というよりデメリットがわかっていないというのが正しいです。
確立されたのが2004年に欧州で開発されてから、確立されたのが2012年頃と最近のものなので、安全性や効果のほどがはっきりしていないという問題がアクアフィリングにはあります。
臨床研究は行われているので、まったく信頼できないというものではありませんが、それでも不確実性を懸念してあえて導入していない病院もあります。
豊胸手術は傷跡でバレるというのは昔の話です。今は、メスを用いなくても豊胸することができて、形や動きも自然な仕上がりにすることができます。
アクアフィリングのような新しい施術も誕生し、ヒアルロン酸や脂肪注入も研究が進み、持続時間が長くなり、定着率をアップさせた施術も出てきています。
医療法人社団東美会 理事長 兼 東京美容外科 統括院長
麻生 泰 医師
・慶應義塾大学医学部 非常勤講師
・日本形成外科学会
・日本美容外科学会
・日本マイクロサージャリー学会