乳がんと見分けがつきにくい?線維腺腫とは
- 公開日:2018年07月24日(火)
- 最終更新日:2024年09月26日(木)
乳がんと線維腺腫の違い
乳がんと線維腺腫はともに乳房内に発症する腫瘍です。どちらも乳房を触ると球状のしこりがあるように感じられ、両者の違いは乳がんが悪性腫瘍で線維腺腫は良性腫瘍であるという点です。
乳がんのしこり
乳がんのしこりはまず感触が固く、まるで根がはっているかのように動かないのが特徴です。場合によっては皮膚が凹んだり逆に隆起したりすることもあります。
線維腺腫のしこり
線維腺腫の感触は乳がんとよく似ていて固めですが、コロコロとよく動くのが乳がんとの違いです。基本的には症状はしこりのみで、乳房の形がかわることも痛みを感じさせることもありません。
線維腺腫になる原因
線維腺腫はその発症理由がよくわかっていません。10代~30代前半という比較的若い世代の発症率が高いこと、思春期や妊娠中に大きくなることがあることから女性ホルモンが関係しているのではないかと推測されています。
線維腺腫の診断方法
線維腺腫は触診でも診断できることがありますが、触診だけでは乳がんとの判別が難しいこともあるので、その場合は以下のような検査をする必要があります。
マンモグラフィー
マンモグラフィーは乳房専門のレントゲン検査です。一般的なレントゲンよりも放射線量が少ないため、乳房の内部組織への影響が少ないメリットがあります。
乳房を薄く延ばすために、やや撮影の際に圧迫するので少し痛みを感じるかもしれません。また、乳腺の密度が濃い若い世代では診断しにくくなる場合もあります。
超音波検査
若い世代の方には、超音波検査の方が診断がつきやすい傾向にあります。痛みもなく放射線を使用しない安全な検査方法で、乳房だけでなく様々な部位に使用されます。
体への影響が少ないのがメリットである超音波検査ですが、その反面石灰化したしこりや小さな腫瘍を見つけるのが苦手で、乳がんの早期発見には繋がらないのがデメリットです。
穿刺
しこりに直接針を刺して、細胞を採取し、顕微鏡で病理学的に検査する手法です。乳房に針を刺すのでマンモグラフィーや超音波検査よりもリスクのある検査です。
しかし、最も正確に診断が下せる手法なので、乳がんでないことを確実にするために必要ならしておくべきでしょう。
線維腺腫によく似た葉状腫瘍とは?
乳がんや線維腺腫と同じく乳房内で発症する腫瘍で葉状腫瘍というのがあります。しこりがあり、コロコロとよく動く腫瘍で乳がん以上に線維腺腫とよく似ていて触診では判別が難しいです。
葉状腫瘍は線維腺腫と同じく、良性腫瘍ですが放置しておくと悪性に変異する可能性があるため、危険性は高いです。しかし葉状腫瘍と線維腺腫は先ほどご紹介した検査を用いても、判別できないこともあります。
線維腺腫は3cm以下の大きさであることに対し、葉状腫瘍は10cmほど大きくなることもあり、その成長度合いが両者の明確な違いです。
そのため線維腺腫と思われていたのが、時間が経過するとともに大きくなり葉状腫瘍であったことが発覚するというケースもよくあります。
線維腺腫は摘出するべきか?
線維腺腫は良性腫瘍で、痛みを伴う事も無いので、放っておいても問題ないとされています。しかし、乳がんや葉状腫瘍などよく似た腫瘍もあるので独断で線維腺腫と判断するのは危険です。
バストにしこりがあると感じたら、まずは専門医に診てもらいましょう。そして、検査を受けて乳がんではないと確定しても安心はできません。なぜなら、まだ葉状腫瘍の可能性があるからです。
そのため、乳腺繊維と診断がくだっても、年に1、2回程度の定期検診を受けておくことを推奨します。もしも想像以上に肥大していたら、葉状腫瘍の可能性が強まりますので摘出しておくべきでしょう。
また、35歳以上でしこりが発生した場合も線維腺腫でなく、葉状腫瘍の可能性が高くなりますので、早めに摘出しておいた方が無難です。
摘出手術について
もしも、線維腺腫が大きくなりすぎて摘出となった場合の流れを解説致します。摘出には切開して腫瘍を引っ張り出す必要があるので、傷跡は少し残ります。
まずは、わきの下に局所麻酔するのですがこの注射の痛みが一番辛いと感じる方が多いです。麻酔が効いてしまえば、あとはわきの下を3~4cmほど切開して腫瘍を取り出すまで痛みをかんじるところはありません。
手術自体は1時間程度で終わり、入院の必要はありません。しかし、術後2~3日は傷跡がひどく痛む場合があるので、仕事などは何日か休みをとった方が良いでしょう。
まとめ
線維腺腫そのものは無害なものであるとされていますが、乳がんや葉状腫瘍などの類似の腫瘍との判別が困難というのが難点です。
しこりを感じたら、まず専門医に診てもらい、診断後も自身で経過をよく観察することが重要と言えます。
この記事の監修医師
医療法人社団東美会 理事長 兼 東京美容外科 統括院長
麻生 泰 医師
・慶應義塾大学医学部 非常勤講師
・日本形成外科学会
・日本美容外科学会
・日本マイクロサージャリー学会
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